投資哲学

オープニング・メッセージ

当社、株式会社ヴァレックス・パートナーズは、投資の町・日本橋茅場町にオフィスを構えるバリュー投資に特化した独立系の投資会社です。2006年の創業以来一貫して、日本の中堅上場企業に対し長期的な投資を行ってきました。当社の主な投資家は、当社の経営方針・投資戦略に賛同する長期的な視野を有する海外の機関投資家です。質の高い日本の中堅優良企業を発掘し、長期的な資本を提供することが当社の使命であると考えています。

投資戦略

  1. 当社が理想とする投資
    当社が理想とする投資は、質の高い事業を有する企業の株式に、その企業の真の価値に対し割安な水準で投資を行い、長期的に保有する事です。当社の考える質の高い事業とは、景気サイクルを通じて平均以上の利益率を維持し、かつ長期的に成長が期待できる事業です。こういった事業に10年という長期間投資すると、たとえ高い成長率でなくても複利効果で事業規模は格段に大きくなります。また、スケールメリットから、利益率の改善も期待できます。事業規模、利益の拡大は、多くの投資家から注目を集め、株価の割安の解消を促します。また、利益額の増大は、会社の真の価値の成長ももたらします。当社では、こういった企業の株式を、著しく割高にならない限りは、永久に保有したいと考えています。
  2. 日本の中堅企業への投資
    「うちはいい会社なのになんでこんなに株価が安いのだろう?」常日頃、そう感じている企業経営者の方も多いと思います。なぜ、日本の中堅上場企業は割安なのか。当社が考える原因は 、以下の3点です:

    • 増加を続ける上場企業数の中で埋もれてしまっている可能性
      日本には3500社以上の上場企業があり、その数は年々増加しています。これは、他の先進国と比べると、非常にユニークな状況です。たとえば、米国では、M&A、上場を維持するためのコストの増加、長期的な経営が出来るといった非上場企業のメリットが見直されたことなどから、この20年で上場企業数が半減し、2017年には3600社程度まで減少しました(その後、2020年には、SPACの上場等により、約6000社まで増加)。「上場企業」、「東証1部上場」が特別な意味をもつ日本では、外部資本が必要かどうかとは関係なく、上場企業数が年々増加しているのです。
      投資家の立場に立てば、3500もの会社を全て調べることは不可能です。ですから、収益力の高い優良企業であっても、一般的に知名度が低い会社、成長率がさほど高くない会社などは数千社にも及ぶ上場企業の中で埋もれてしまっています。
    • アピールが苦手な日本企業
      謙虚さを美徳と考える日本人は、取引先への配慮もあり、自社がいかに高い収益を上げているか、アピールする事が苦手なようです。高い品質の商品を作っていれば自然と売れると考えている会社が多いように、まじめにきちんと経営していれば、いずれ投資家が見つけてくれると考えている企業経営者が多いのではないでしょうか。また、海外には同業が存在しない、日本特有の事業を有する企業も非常に多いと思います。日本企業の情報開示もだいぶ改善しましたが、多くの海外投資家は、日本企業に関する十分な情報が集められず、事業の本質の理解に苦労しているというのが現状です。
    • 低い資本効率
      多くの優良中堅企業は、長年の利益の蓄積として、潤沢な資本を有しています。その多くが現預金で保有されている場合、事業は高収益であっても、資本に対する利益率(ROE)は低水準となってしまいます。多くの投資家は、高いROEの企業が良い企業であると考えているので、そうでない企業は自然と検討対象から除かれてしまいます。不測の事態、将来の投資に備えるために、十分な資本を蓄積しておきたいという企業経営者の気持ちも良くわかります。一方、ROEが低いと投資対象として検討もしてもらえないというのも事実です。そのため当社は、強固な財務体質を維持しつつも、投資や株主への還元を徐々に強化し、バランスをとりながら資本効率を改善させていくことが、割安の是正には必要であると、考えています。
  3. ファンダメンタル・リサーチ
    長期的に投資することが出来る優良な企業を発見するためには、手間を惜しまず、一つ一つ企業を調査することが重要です。企業の本質的な価値を理解するためには、その会社の短期的な業績動向ではなく、利益率や成長率の長期的な持続性に対する理解を深めることが不可欠です。 そのため当社は投資を検討する全ての会社に対しては、個別の面談をお願いしています。当社が「なぜこんなに儲かるのですか?」と質問すると、多くの企業経営者の方々が「実はね・・・。」と、どこにも書いていない本当の利益の源泉を説明されます。このような情報は、当社にとって最も価値の高い情報です。
  4. 経営陣との長期的な関係構築による好循環を追求
    当社の最大の比較優位は、長期的な投資家からなる投資家構成であると考えています。仮に短期的に株式市場が大きく下落したとしても、当社の投資家は投資方針を急に変えたりしませんので、当社は長期的な視野で投資を継続することが可能です。株式市場の大きな下落というのは、絶好の投資のチャンスでもありますから、多くの市場参加者が狼狽しているときに、長期的な視点で投資を行うことができるというのは、当社にとって非常に有利であると考えています。当社は、上場企業も、長期的な視野を有する株主に支えられるメリットがあると考えています。企業は、短期的に業績が悪化する可能性があっても、長期的に企業を成長させるため、または業界内での地位をより磐石にするため、大規模な投資やビジネスモデルの大幅な変更が必要なことがあります。そういった際、当社は、経営判断を理解し、大きな構造改革を後押しする長期的な株主でありたいと考えています。また、そういった決断を行うことが出来る経営者、企業体質を当社は高く評価しています。長期的に投資を行うことで、当社は投資先企業に対する理解を深め、より正確に企業の真の価値を推計することが可能となります。一方、企業側も、事業をよく理解した長期的な株主を有することで、長期的な視野で経営を行うことができます。このような好循環をもたらす関係を投資先企業と構築する事が、当社の投資においても最も重要な事です。

当社の経営方針

顧客、投資企業との利害の一致

当社の投資家、従業員、株主が成功するためには、投資先企業の長期的な成功が不可欠です。その為、当社では、長期的な成功から経営陣も利益を享受する仕組みが採用されていることを重視します。この投資先企業の経営陣、当社の投資家、当社に続く利害の一致が、当社の経営にとって最も重要な基盤です。

当社は、当社の長期的な投資哲学に賛同する投資家だけを受け入れます。こういった投資家構成は、当社の全ての投資家、投資先企業、そして我々の成功を達成するために不可欠な要素だと考えています。

海外投資家と国内企業の架け橋

当社は海外の機関投資家、投資会社、運用会社に向けて、日本市場や優良中堅企業の魅力に関し、積極的に情報発信しています。その結果、当社には、長期的な投資を行う様々な投資家からなるグローバルなネットワークが構築されています。当社はこのネットワークから得た、海外の企業や投資事例などの情報を投資先企業に積極的にフィードバックしています。更に、これらの長期指向の質の高い投資家を、当社の投資先企業に紹介しています。

企業文化

当社は、誠実、正直、謙虚、ユーモアを企業文化の基盤にしたいと考えています。これらに基づき、投資先企業、投資家、同僚、その他のビジネスパートナーと関係を構築していきます。

誠実・正直さというのは、投資の成功、失敗に対して正直、誠実であることだけを意味するのではなく、知識面においても、知らないことを素直に認め、また、世の中には知ることができない事も沢山あるという事実に対し誠実、正直でありたいという事も意味しています。企業を分析する際にも、短期間でその企業の全てを理解することは不可能です。当社の場合、10年投資している企業であっても、経営陣と会うたびに、かならず新しい発見があります。

当社の信じるバリュー投資はシンプルな投資哲学です。要は、質の高い企業に割安な水準で投資を行い、割高にならない限りはずっと保有を継続するという投資です。しかし、これを継続して行うことは決して簡単なことではありません。将来何があるかは誰にもわかりません。投資先企業に対する理解が完璧になることもありません。また、バリュー投資が短期的に機能しなくなる可能性もあります。その為、バリュー投資を継続するためには、常に謙虚な姿勢でいる必要があると考えています。

当社の運用チームのメンバーは全員自身のことを基本的には企業を分析するアナリストであると考えています。我々は、毎日、何か新しいことを学び、投資のアイデアに関して考え、話し合うことが天職であると感じています。90才を過ぎたウォーレン・バフェット氏も、毎日、小躍りの気持ちで出勤するそうです。バフェット氏の境地に達することは一生できないかもしれませんが、当社は、バリュー投資や企業分析に対し情熱を持つアナリストに、最高の環境を提供することを目指しています。

真の投資会社を目指します

当社にとっての成功とは、運用資産規模を最大化することではなく、あくまでも投資の実績として長期的に高い収益をあげる事です。当社では、プロモーションやマーケティングに対する経営資源の配分は最小にとどめ、本業である投資活動にできるだけ多くの経営資源を投下したいと考えています。これが、当社の目指す真の投資会社です。

真の投資会社を目指すためには、以下の3点が重要であると考えています:

  • 独立性: 当社は、投資で成功するためには、独立した考えを持つことが不可欠であると考えています。当社が行っているバリュー投資は、長期的には高い実績をもたらしてきましたが、短期的には低迷することもありました。そういった逆境でも、一貫した投資哲学を継続するためには、運用会社の株主構成も独立している必要があると考えています。現在、当社の株式のほとんどを役員及び従業員とその関連企業が保有しています。
  • 資産規模: 当社は、運用資産規模の増大は、運用実績にマイナスの影響をもたらすと考えています。運用業界では、資産規模を急拡大させたために、実績が低迷し、解散に追い込まれてしまった例が数多くあります。当社は、資産規模の急成長を避け、市場の投資機会に見合った適正な資産規模を維持していきます。
  • 一つの投資戦略: 当社は、当社が一番良いと考える投資戦略でのみ、投資を行います。運用資産規模を拡大することを目的に、2番目に良い、3番目に良いと思う投資商品の運用を行うことはいたしません。